【富山県立高校入試・国語対策】物語文
物語文では、人物の行動・心情変化・表現効果を読み取る力が問われます。この記事では、場面の前後を比べながら、人物どうしの受け止め方の違いを説明する練習をします。
本文
文化祭の準備で、私は展示係になった。美術部でもない私が、廊下に飾る大きな案内板を任されたのは、たまたま去年のポスターで賞をもらったからだった。けれども、その賞は友人の凛が下書きを直してくれたから取れたものだ。私は筆を持ったまま、白い板の前で何度もため息をついた。
放課後の教室に、用務員の佐伯さんが古い木箱を運んできた。中には使いかけの絵の具や、短くなった刷毛が入っていた。「捨てる前に、使えるものがあればと思ってね。」佐伯さんはそう言って、窓ぎわに腰を下ろした。
私は青い絵の具のふたを開けた。中身は固まりかけていて、表面だけが乾いた池のようだった。佐伯さんはそれを見て、「水を少しずつ入れて、待てばいい」と言った。私は急いでいたので、刷毛で強くかき回した。すると絵の具はだまになり、板の上に重い雲のような跡を残した。
「絵の具も、人の話も、すぐにはほどけんことがある。」佐伯さんは小さく笑った。私は返事をしなかった。凛に手伝ってもらえば早いのに、今日は部活の大会前で頼めない。自分一人で仕上げなければならないと思うほど、刷毛の跡は乱れていった。
夕方、凛が教室をのぞいた。「まだやってたんだ。」私は思わず板を隠すように立った。凛は何も言わず、少し離れた場所から見た。「雲みたいでいいじゃん。下手に消さない方が、空っぽじゃなくなる。」その言葉を聞いたとき、私は胸の中の固いところが少しゆるむのを感じた。
私は白い板の上に、町の道を細く描き足した。乱れた青は、会場へ向かう空になった。佐伯さんは「急いで消さなかったから、残ったものがあるね」と言った。凛は笑って、余った刷毛を一本、私の机に置いた。
文化祭当日、案内板の前で小さな子が立ち止まった。「この空、動いてるみたい。」その声を聞いて、私は刷毛を握った日のことを思い出した。失敗を消すことばかり考えていた私は、ようやく、失敗を終わりにしない方法もあるのだと思った。
問題
- 「白い板の前で何度もため息をついた」とあるが、このときの私の気持ちとして最も適切なものを、次から一つ選びなさい。
ア 案内板を任されたことに自信を持ち、早く完成させたいと思っている。
イ 自分の力だけでうまく仕上げられるか不安に思っている。
ウ 文化祭の準備を友人に任せたいと思い、安心している。
エ 去年のポスターで賞をもらったことを誇らしく思っている。
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- 「重い雲のような跡」とは、実際には何の跡か。本文中から四字で抜き出しなさい。
- 佐伯さんが「水を少しずつ入れて、待てばいい」と言った理由として最も適切なものを、次から一つ選びなさい。
ア 絵の具をすぐに捨てたかったから。
イ 固まりかけた絵の具を急にかき回すと、うまく混ざらないから。
ウ 私に文化祭の準備をやめさせたかったから。
エ 青い絵の具を全部使い切りたかったから。 - 凛の「雲みたいでいいじゃん」という言葉を聞いた後の私の心情として最も適切なものを、次から一つ選びなさい。
ア 失敗を責められたと思い、さらに不安になった。
イ 自分の作品を見ないでほしいと思い、腹立たしくなった。
ウ 失敗だと思っていた跡にも意味を見つけられる気がした。
エ 凛にすべて描き直してもらおうと安心した。 - 「胸の中の固いところが少しゆるむ」とあるが、私の気持ちはどのように変化したか。本文の内容に即して説明しなさい。
- 「乱れた青」は、最終的に何になったか。本文中から七字で抜き出しなさい。
- 私と凛の、板の上の青い跡に対する捉え方の違いを説明しなさい。
- 佐伯さんの「急いで消さなかったから、残ったものがあるね」という言葉の意味として最も適切なものを、次から一つ選びなさい。
ア 絵の具を早く片付けなかったので、教室が汚れたということ。
イ 失敗に見えた跡を残したことで、作品の一部として生かせたということ。
ウ 古い道具を使ったため、案内板が予定より古く見えたということ。
エ 凛に手伝ってもらわなかったので、完成が遅れたということ。 - 「失敗を終わりにしない方法」とはどのようなことか。本文中の言葉を用いて説明しなさい。
- この物語で、佐伯さんの言葉や行動は、私にどのようなことを気づかせる役割をしているか。本文全体を踏まえて説明しなさい。 “`
解答
- イ
- 刷毛の跡
- イ
- ウ
- 失敗だと思っていた跡にも意味があると感じ、少し安心した。
- 会場へ向かう空
- 私は青い跡を失敗として消したいものと捉えていたが、凛は雲のように作品を豊かにするものと捉えていた。
- イ
- 失敗を消すのではなく、作品の一部として生かすこと。
- 思い通りにならないものをすぐに消そうとせず、そこから新しい形を見つけることの大切さに気づかせる役割をしている。
解説
問1は、第一段落の「その賞は友人の凛が下書きを直してくれたから取れたものだ」という部分に注目します。私は自分の力だけで案内板を仕上げられるか不安に思っています。
問2は、「刷毛で強くかき回した」「板の上に重い雲のような跡を残した」という流れから判断します。実際には「刷毛の跡」です。
問3は、固まりかけた絵の具を見て、佐伯さんが「水を少しずつ入れて、待てばいい」と助言している場面です。急にかき回すとうまく混ざらないため、イが正解です。
問4は、凛の「雲みたいでいいじゃん」という言葉によって、私が失敗だと思っていた跡の見方を変える場面です。したがって、ウが正解です。
問5は、「胸の中の固いところ」がゆるむという比喩を、心情の変化として説明する問題です。私は、青い跡を失敗として隠したい気持ちから、それにも意味があると思える気持ちへ変化しています。
問6は、「乱れた青は、会場へ向かう空になった」という部分から、七字で抜き出します。答えは「会場へ向かう空」です。
問7は、同じ青い跡を、私と凛がどのように受け止めているかを比べます。私は失敗として消したいものと考えていますが、凛は作品を豊かにするものとして見ています。
問8は、佐伯さんの言葉の意味を問う問題です。急いで消さなかったことで、失敗に見えた跡が作品の一部になったため、イが正解です。
問9は、終盤の「失敗を消すことばかり考えていた私は、ようやく、失敗を終わりにしない方法もあるのだと思った」という部分に注目します。失敗を消すのではなく、作品の一部として生かすことを説明します。
問10は、本文全体を踏まえて考える問題です。佐伯さんは、絵の具や刷毛を通して、思い通りにならないものをすぐに消すのではなく、そこから新しい形を見つける大切さを私に気づかせています。
学習ポイント
- 物語文では、同じ出来事を人物ごとにどう受け止めたかを比べる。
- 比喩表現は、実際の物・行動・心情に置き換えて考える。
- 心情変化は、出来事の前後を比べて整理する。
- 終盤の言葉は、本文全体の主題と結びつくことが多い。
※本記事は、過去問分析をもとに当塾が作成した学習用コンテンツです。出題傾向の分析・整理にはAIも活用しています。
